「感覚過敏」というのは、音や光、触覚・味覚などが敏感というイメージしか持っていませんでしたが、息子の一番の特徴は、「波」の感覚があることです。
すべての物から「波」が出ている
息子が言うには、あらゆる物から「波」が出ているそうで、この波のおかげで、だいたいの空間把握ができると言います。
初めて波の話を聞いたのは、WISC-Ⅳ検査の結果が出て、息子の目の見え方が普通じゃない(※)とわかり始めた頃でした。(※息子の特殊な目の見え方についてはこちら)
そんな見え方で、これまで一体どうやって 野球をしていたの〜!?
息子は1年生のころから、野球をやっていました。
飛び抜けて上手いわけではありませんでしたが、一通りのことを普通にこなしていて、試合にも最初に出させてもらったりしていました。
空気の動きというか…波が伝わってくるでしょ。それで何とかやってたけど、、すごく難しくて大変だった。
空気の動き??なんの話!?
いや、、まさか目が見えてない状態でプレーしていたとは、、、ちょっと信じられない話でした。。
みんな、目でボールが見えてるし、誰がどこにいるかも、一目でわかるんだよ。
ぼくはボールの形は(触ってるから知ってるけれど)目で「丸い」というのは、見えないよ。
えー!そんな状態でやっていたの!?
他のみんなも、波の感覚でやっていると思っていた。ぼくだけが見え方が違うなんて、そんなの知らなかった。
さぞかし辛かったろうなぁと思いました。。
もともと野球は、本人の希望で始めたものでしたが、試合が始まりポジションなどの状況把握が必要になってくると、限界を感じ始めていたようです。(不登校とほぼ同時期に辞めることになりました)
そんなわけで、息子がとても頼りにしているこの「波」ですが、話を聞いていると何種類かあるようです。
エコーロケーション(音の波)
イルカやコウモリは、音の反響によるエコーロケーション(反響定位)で、空間認知をしています。実はエコーロケーションは人間でもできるということを、息子の話がきっかけで初めて知りました。
有名なのがアメリカのダニエル・キッシュさん。ダニエルさんは全盲の方ですが、音の反響により、細かい部分まで空間把握をされていて、一人で自転車に乗ったり、登山やハイキングなどのアウトドアも楽しまれています。
ダニエルさんがすごいのは、エコーロケーションを、人に教えていることです。実際にダニエルさんから学んで、この感覚を習得されている方々が何人もいらっしゃいます。
息子はダニエルさんほど細かい部分は把握できませんが、音は空間把握をするうえで大事な手がかりだそうです。
物の動きによる(?)波
息子の様子を見ていると、音とは別種の波が存在しているように思います。
理由は、大きな音がしていても、この波の辛さだけが緩和することが多々あるからです。「衝撃」や「物体の動き」による波のように感じます。
物が動くと、物質から出ている波がより強くなって、静止すると弱くなるよ
とても物理的な感じです。
この波が一体なんなのか分からないのですが、物理学に詳しい方は、おわかりになるでしょうか。。
自分からも(手を叩いたり、足踏みをするなどで)振動を出すと、自分から出る波が、周りの物質から出る波をキャッチし、世界が一瞬だけ「透明」のようになり、そこで大まかな空間把握をしていると言います。
この波のおかげで、視覚が正常でなくても、誰ともぶつからずに、歩いたり自転車に乗ったり(※)しているそうです。
※一人だけでは道がわからなくなるため、私の自転車後部のマークを頼りに走っています。
※だいたいの空間把握はできても、自分がルートのどこを歩いているかは、息子はわかりません。
精神的な波
人が怒っていたり落ち込んでいたり。逆にとても興奮していたり、ものすごい感動していたり…。
そんな人の精神面からも強い波を感じると言います。
いくら表面上は優しい笑顔を作っていても、心の波は隠せないようです。
この感覚があるため、大人でも気付かないことまで息子はわかってしまい、「すごく気遣いができる子!」と驚かれることがよくあります。
例えば、小学校の養護の先生はとても若くて、いつも笑顔の明るい方なのですが、息子(当時小学2年生)は
先生、大丈夫ですか。ものすごく疲れていませんか。休んだ方が良いです…
と言って、一人で仕事を抱えて疲れていた先生が驚いたり…という具合です。大人から見ると、そこまではわからないことも、息子は波をビシビシ感じるので、色々なことが分かり過ぎてしまうようでした。
ただ、この精神的な波の感覚は、小2・3年生のころMaxでしたが、今は自然と少し緩和したように思います。そうじゃないと生きづらくて大変なので、良かったなと思います。
波が痛い
困ってしまうのは、これらの波が痛いということで、息子は常に、大なり小なりの痛みを感じている状況です。
世の中のすべての人が、この感覚に折り合いをつけて我慢しながら生きていると思っていたそうで、学校のみんなが楽しそうに笑いながら話したり遊んだりしている様子を見て、
みんな痛いのを我慢しながら、本当に偉い。尊敬だ。
いつもそう思っていたそうです。また、同時に
自分はなんて我慢の足りない人間なんだろう。みんなと同じようにできないのは、努力が足りないからだ。
と、自分を責めていたとのこと。
息子がそんなことで悩んでいたなんて、私はこれっぽっちも知りませんでした。
違うよ!みんなに波の感覚なんてないよ!痛みなんて感じていないんだよ!!
ガーーーーーン!!!!
「痛みを感じているのは、自分だけだった」
「我慢しているのは、自分だけだった」
これを知ったときのショックは、言葉にできず、あまりの衝撃に、一晩中眠れなかったそうです。
みんなも大変な中、頑張って毎日を過ごしていて、だから自分も頑張らなきゃと何とか奮い立たせていたけれど、
みんなはそうじゃないと知ってしまった今、もう頑張れない
そう思ったそうです。
この波の痛みは、叩かれるようだったり、刃物で刺されるような痛みだそうです。
そんな恐ろしい状況のところへ、毎日無理して通っていたのかと思うと、本当に可哀相で、
もう頑張らなくていい!!学校へ行くのはやめよう!!
こうして学校へ行かない道を、真剣に模索するようになりました。
▼この「波」のエピソードは、こちらもご覧ください
プロフィール
幼い頃から華々しいエピソードがあるわけでもなく、全体がすごい高IQなわけでもない。それでも「ちょっぴり」突出したものがある、そんな息子の日常を書いています。
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