息子はどのように世界を認識しているのか(2)空間把握編

感覚過敏・視野障害

視野障害があるけれど、まるで見えているかのように動ける息子。
どんな風に世界を認識しているのか、息子の空間把握について書いてみます。

▼前回の「視覚編」はこちら

視覚以外の感覚をフル活用

息子は音・空気の流れ・その他色々な「波の感覚」を頼りに、空間把握をしているそうです。

動きが伝わってくる

息子の横で手を振る人がいるとします。
(声は出していません)

息子は横の人が全く見えていません。

でも、気づいて振り向きます

まるで目が見えているように感じますが、見えているのではなく、波の感覚で気づいています。

かなり距離があったり、真後ろからでも気づくことがありました。

※人の視線や、手を振る動作の波が伝わってくるそうです。

野鳥観察においては

鳥のはばたき、首の動きなどの波が届くようです。

▼小3時のエピソード

息子:あそこにチョウゲンボウがいる。
母:え、どこ?
あの木の中。
バササ!(鳥が飛び出す)
あ!ほら!出てきた!
えー!なんでわかるの?
チョウゲンボウが首をクルッとする動きの波が伝わってきたんだ。

種によって動き方が異なるので、伝わってくる波も違うらしいです。

種ごとの違いを書いてくれた絵(小3)

どの波がどの種に該当するかは、体験して覚えるしかないそうで、鳴き声で種の判定をするのと似ています。

遠くの物ほど気付きやすい

息子はこのくらい遠くにある物を、パッと見つけることができます(対岸までは130m)。
視覚のほか、音や波の感覚を総合的に使っているようです。

ただ、この波の感覚は成長とともに変化していると思います。

不登校後の1年間は敏感過ぎて大変だった時期がありましたが

今は少し緩和したのか、以前ほどは明確にわからない部分もあるようです。
(その分、楽にもなっています)

今後も変化するかも知れません。

波の感覚は「推測」しかできない

「波の感覚」は視覚のようにハッキリわかるものではなく、だいたいの大きさや形を推測するくらいのようです。

細部は視覚で確認

例えばフォークがあった時、大まかな形は波の感覚でわかっても、それが何か判断はできません

視覚で細部を確認することで、初めて「フォーク」と認識できます。 

大きい物は判断が難しい

車が前に駐車していた場合、車が音を出していなくても、息子は気づいて避けることができます

今、目の前に車があったの、わかった?

え!あれ車だったの??

やっぱり「車」という認識は、できてないんだな

この時の息子

・波の感覚で、前に障害物があるのはわかる
・でも、それが何なのかはわからない
 (大きくて視覚でも判断できなかった)

このように、認識できることは一部に限られます。

※車のエンジン音があれば「音」で判断することができます。

認識できるもの・できないもの

下記写真、息子は看板の文字が全く認識できていませんでした
「文字が書いてあるよ」と説明しても、サイズが大きすぎて分かりません。

「看板のような物が立っている」のは波の感覚で気づけても、その他は「赤と白」という色しか認識できませんでした

だから駅の看板なども読めません

※ただし、遠く離れた所から見ると、文字サイズが小さくなるので、認識できるようになります。

一方、下記のような少し凸凹のある文字だと、大きな文字でも読めることがあります

凸凹があり波の感覚から伝わる情報もあるので、平面より手がかりがつかみやすいようです。

「なんだ、見えてるじゃない!と思いがちなのですが、見えていたわけではなかった…

こういうことは息子と過ごしながら、時間をかけて分かってきたことです

触れる物は わかりやすい

レゴブロックやプラモデルなど触れる物はとても解りやすいそうで、小さい頃の玩具が長い間活躍しています。

幼稚園:年長時「はやぶさ2」
記憶だけを頼りに作っていました

こういう物を作っていたから、まさか「目が正常に見えていない」なんて思わなかったんだよ…

全体の形は、触ったり空気の流れでも把握できるんだ

ブロックやプラモデル作成中は、ゆっくり振って全体の形を確認しています。

空気の流れで形を確認

色を左右対称に揃えるのは
どうやっているの?

色のブロックを触って
数えて作ってるだけだよ

・・・・

空間把握の練習

息子の見え方では「奥行感」がよくわからないため、波の感覚と、実際の奥行きの関係を

ボールの壁当てや輪投げなどで、遊びながら練習していたそうです。

輪投げ、ボールの壁当てなどで
奥行き感をつかむ

生活にも役立つし、楽しい

波の感覚が遮断されると

大雨の時は「波の感覚」による空間把握ができなくなり、一歩も動けなくなってしまうことがあります。

雨の音・雨粒の跳ね返りの刺激で
空間把握ができなくなる

こういう時、「見えている」から歩けているわけではないんだと、実感します…

感覚過敏の息子には、雨の刺激は「痛い」ものでもあるので、雨の日は色々と大変です。

以上、現時点でわかっていることをまとめましたが、まだわかっていないことも、たくさんありそうです😓

「波の感覚」は特別なものではない

この「空気・波の感覚」は、眼科・小児科・ギフテッド専門のお医者様も「聞いたことない」と言われ

息子独特の感覚なのだろうと思っていました。

そんな話、聞いたことありません

信じてもらえないよね…

「変な親だ」と思われるだけなので、この話をするのは、いつも気が進まなかったのですが…

盲学校の先生は、全然違う反応でした。

そういう感覚
あるみたいですね~

え!!

全盲のお子さんで、跳び箱7段をポーンと飛んだり、自転車も1人で乗れたり、すごいバランス感覚の子がいましたよ(※障害物がない広場で)

その子は前に壁があると分かるんです。
「空気の流れ感覚で、閉じているのが伝わってくる」と言ってました

息子と似てる!!

全盲のシンガー・ソングライター栗山龍太さんも、エッセー漫画で次のようにお話されていました。

息子と似た感覚の方がいて
心強かったです!

まとめ

皆さんも、見慣れた自宅にいる時、自分の真後ろがどうなっているか、視覚で確認しなくても頭で何となくイメージできるのではないでしょうか?

脳が部屋を記憶しているからですね。

また、誰かが自分をジーっと見つめていると、(見えていなくても)

何かモワモワした感じがして、視線に気づくことはありませんか?

おそらく息子は、このような

  • 視覚(スキャニング)や脳の記憶によるイメージの世界
  • 空気や音などの「波の感覚」

これらをフル活用して生活しているのだろうと思います。

息子がどんな見え方で
どんな世界を生きているのか

息子にならない限り、
絶対にわかりません。

一生理解することは、できない…

ただ、これは誰にでも当てはまることで
みんな同じ世界を生きているように見えるけれど

本当にそうでしょうか?

人の感じ方・認識の仕方は、
皆少しずつ違っていて

生きている世界も一人一人、
違うのだと思います

「自分の世界が正しい」と
押し付けちゃダメだな~

▼「波の感覚」については、こちらでも記事にしています

お読みいただき
ありがとうございます✨

プロフィール


幼い頃から華々しいエピソードがあるわけでもなく、全体がすごい高IQなわけでもない。それでも「ちょっぴり」突出したものがある、そんな息子の日常を書いています。
→息子のプロフィールはこちら

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